伝統工法とは

地域の森の木で作る伝統工法の家。伝統工房有限会社谷川設計事務所

木造伝統工法を採用する理由

木造住宅を建築する場合に、私たちが木造伝統工法を選ぶには理由があります。一つは構造上の問題です。これまで伝統工法については構造計算に乗りにくく研究が充分されてきたとはいえません。
しかし、一部の構造家や建築家等が構造研究や実大実験を行うなど努力の結果、伝統工法は地震などの力に対して、建物が変形はするが容易に倒壊せずに持ちこたえる粘り強い性質を持っていることが実験結果の数値により実証されるようになりました。
これまで何度か各耐力壁の実大実験 に参加してきましたが、伝統工法を理解する上で貴重な体験であったと思います。 このページの下にあるとおり、建築基準法では仕様により土壁の 壁倍率 が1.5まで認められるようになりました。また建築基準法で限界耐力計算法の採用ができるようになり、計算により構造耐力の裏づけを取ることも可能です。 非常に重要なことですが、耐震性能を長期にわたり維持し続けることにより大地震時に建物の倒壊から命を守る、それが私たちの構造上の最終目的です。 それと現代軸組工法に比べて、伝統工法では地震時のゆれに対して、変形や損傷が大きくなるということは申し述べておかなければならなりません。

もう一つの理由は、毎日の、生活する場としての家の性能と地域木材の需要率向上のためです。 現在、サイディング類、ビニール系床材、ビニールクロス、表面だけ天然木材を貼付けたフローリング、ボード類などさまざまな新建材といわれる工業製品があふれています。そしてわずか20年ほどで産業廃棄物として捨てられることになるのですが、私たちが使い、捨て続けるこれら大量の廃棄物が一体どこへ行くのかを考えなければなりません。

年を経るに従って醜く劣化して行く新建材やビニールなどに包まれた家の毎日であるとしたら、どうして家族が健康に暮らすことができるでしょう。 今のように20年、30年でこわしてしまうものを、人が生活を刻んで行く家とはとてもいえません。

明治初頭に3度来日し日本各地を記録した、エドワード.シルベスタ.モースの著書「日本その日その日」の中で、建設されてから殆ど300年にもなる民家の様子が記されています。現代の私たちには望むべくもありませんが、せめて100年は住み続けることのできる家を作りたいものです。
私たちの祖先が作った古民家を訪れた時、そのていねいな仕事と今なお輝く美しさに、見るとほとんどが木と土と紙とでできていますが、それを作り上げた、当時はどこにでもいたであろう職人たちにたいして尊敬の念を抱かずにはいられません。

木造伝統工法とはどんな工法でしょうか。

木造伝統工法とは、大工や左官等の伝統技術の総称として用います。梁(はり)や柱を加工して木を互いに組み合わせることにより骨組みを構成します。金物はほとんど使用しません。昔ながらの長ほぞ、込み栓、楔(くさび)だぼなどで固定します。
また貫(ぬき)という木を柱を貫通させることにより、土壁を塗るための竹を固定すると共に、柱と壁をしっかりつなぐ役割を果たします。木組みと貫そして土壁が地震に対して粘り強さを発揮するのです。ただし建築基準法では貫の耐力は認められていません。しかし実大実験では壁倍率1.0倍ほど耐力があることがわかります。

私たちのまわりにはすぐれた伝統木造技術があります。地域の木材とこの技術を使うことにより建物の性能を存分に生かすことができます。私たちは次の世代に、この木造建築技術を受け継いで行かなければならないと考えています。

木造伝統工法の家が一部の階層の人のものではなく、たくさんの人のために、私たちは建築工事費を押さえて、骨太な木材を使い丈夫で長持ちのする木造伝統工法の家の普及に取り組んでいます。

建築基準法における木造伝統工法の位置付け。

平成15年12月9日国土交通省告示第1543号の改正で、昭和56年建設省告示第1100号として、土塗壁、落し込み板壁、面格子壁の壁倍率が規定されました。従来土塗壁は壁倍率が0.5倍だけでしたが、改正により壁倍率1.0倍、1.5倍の仕様が加えられました。 土塗壁の壁倍率1.5倍は、筋交い30mm*90mmを入れた壁と同じ倍率になります。


土壁工法の断面

落し込み板壁工法の断面

面格子壁工法の断面

 

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